飲食店の利益を守る「3つの数字」

売上が伸びても安心できない。飲食店が今見るべき「3つの利益指標」
飲食店経営では、売上や原価率などの分かりやすい数字に目が向きがちです。
しかし、売上が増えているのに利益が減る店もあれば、会社全体は増益でも、現場の店舗には利益が残っていないケースもあります。
今回紹介する最新動向から学べるのは、次の3点です。
- 平均物価ではなく、自店の仕入価格を見る
- 売上成長率とコスト上昇率を比較する
- 値上げではなく「支払う理由」をつくる
1.物価全体が下がっても、飲食店の原価は下がらない
日本銀行が2026年10月13日に発表した9月の企業物価指数では、国内企業物価は前月比0.3%低下しました。
一方、飲食料品は前月比0.2%、前年比4.2%上昇しています。たれ・めんつゆ、練り製品、スポーツドリンクなども上昇品目として挙げられました。
つまり、「物価上昇が落ち着いた」というニュースだけを見て、仕入環境も改善していると判断するのは危険です。
飲食店によって、使用する食財も使用量も異なります。大切なのは平均値ではなく、自店への実際の影響です。
仮に月間仕入れ100万円が4.2%上昇すれば、負担増は月4万2,000円、年間では50万4,000円になります。
ただし、本当に必要なのは、このような平均値による計算ではありません。
店舗では、次の式で食財ごとの影響額を出します。
月間使用量 × 仕入単価の上昇額 = 月間利益への影響額
店舗で取り入れること
まず、使用金額の大きい食財を20品ほど選びます。
そのうえで、
- 前回の仕入単価
- 現在の仕入単価
- 月間使用量
- 月間の負担増加額
- 使用しているメニュー
を一覧にします。
蕎麦店なら、蕎麦粉だけではありません。醤油、めんつゆ、出汁原料、天ぷら油、練り製品、飲料なども確認が必要です。
原価対策では、「何%上がったか」よりも「月に何円利益が減るか」を把握することが重要です。
2.本部が増益でも、加盟店が儲かっているとは限らない
米国Domino’sの2026年第3四半期決算では、売上高が前年同期比3.4%増、営業利益が8.3%増となりました。
この数字だけを見ると、順調な決算に見えます。
しかし、米国加盟店の既存店売上は、わずか0.3%増。前年同期の5.3%増から大きく減速しています。
さらに、加盟店へ供給される食財・段ボールなどの価格は2.2%上昇しました。
加盟店の既存店売上が0.3%しか増えていない一方で、供給価格は2.2%上昇しています。
加盟店の利益は公表されていないため断定はできませんが、人件費や販促費を改善できていなければ、店舗利益率が圧迫された可能性があります。
ここから学べるのは、本部の業績と店舗の採算は別々に確認する必要がある、ということです。
店舗で取り入れること
フランチャイズや多店舗企業では、会社全体の売上だけでなく、店舗ごとに次の数字を確認します。
- 既存店売上の伸び率
- 客数の増減
- 食財・包材価格の上昇率
- ロイヤルティーと広告費
- 店舗営業利益率
- 借入返済後のキャッシュフロー
特に重要なのは、売上成長率とコスト上昇率の比較です。
たとえば、売上が1%増えても、食財費と人件費が3%増えていれば、利益構造は悪化している可能性があります。
「会社全体で増収増益だから問題ない」ではなく、1店舗ごとに現金が残っているかを確認する必要があります。
3.値上げするほど「外食する理由」が必要になる
米国の2026年9月の外食価格は、前年比3.5%上昇しました。
業態別では、
- フルサービス店:3.8%上昇
- QSR・限定サービス店:3.2%上昇
- 家庭用食品:1.8%上昇
となっています。
外食価格の上昇率は、家庭用食品より1.7ポイント高い状態です。
これは米国の統計なので、日本へそのまま当てはめることはできません。
しかし、外食と自炊・惣菜との価格差が広がるほど、お客様が「わざわざ外で食べる理由」を厳しく判断する点は共通しています。
この状況で、単に原価上昇分を価格へ転嫁するだけでは、来店頻度が下がる可能性があります。
必要なのは、価格を上げる説明ではなく、支払う理由をつくることです。
店舗で取り入れること
価格改定を行う前に、主力商品について次の5項目を確認します。
- 家庭では再現しにくい調理技術があるか
- 地域性や季節感のある食財を使っているか
- 出来たてだからこその価値があるか
- 接客や空間を含めた体験価値があるか
- 他店では得にくい独自性があるか
たとえば蕎麦店なら、蕎麦そのものだけでなく、
- 地元の醤油や地域食財
- 茹でたて、揚げたて
- 季節の天ぷら
- 地域ならではの一品料理
- 器、盛り付け、接客、空間
まで含めて価格の理由をつくります。
お客様が求めているのは、必ずしも最安値ではありません。
「この内容なら、この価格を払ってもよい」と思える納得感が、これから一層重要になります。
飲食店が今週確認すべき3つの数字
今回の動向を、店舗経営へ落とし込むなら、次の3点を確認してください。
1.主要20食財の月間影響額
月間使用量 × 仕入単価差
原価率だけでなく、利益が月に何円減ったのかを計算します。
2.売上成長率とコスト上昇率
売上だけでなく、食財費、人件費、包材費、決済手数料の上昇率と比較します。
3.値上げ後の客数と商品別粗利額
価格を上げた結果、客数や販売数量がどれだけ変化したかを確認します。
販売数量 × 1品当たり粗利額
値上げによって原価率が改善しても、販売数量が大きく減れば、粗利総額は減少します。
まとめ
飲食店経営で見るべきなのは、売上や原価率のような表面の数字だけではありません。
重要なのは、
- 実際に何円コストが増えたのか
- 売上よりコストの方が速く上がっていないか
- 値上げ後も客数と粗利額を守れているか
- 最後に店舗へいくら現金が残ったのか
という点です。
平均物価が下がっても、自店の原価が下がるとは限りません。
会社が増益でも、すべての店舗が儲かっているとは限りません。
そして、値上げをしても、お客様が支払う理由を感じなければ客数は守れません。
これからの飲食店経営では、平均値や全社売上ではなく、商品別・店舗別に実際に残る利益を把握することが、黒字経営の基本になります。

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